花粉症やホコリ、動物の毛などによるアレルギー症状でお悩みの方はとても多いと思います。くしゃみ、鼻水、目のかゆみ…。それらを和らげるために市販薬を使いたいけれど、薬局の棚にずらっと並ぶ抗アレルギー薬の中から、どれを選べばいいのか迷ったことはありませんか?
今回は、薬剤師の視点から、市販の抗アレルギー薬を選ぶ際のポイントをわかりやすく解説していきます。この記事を読めば、自分に合った薬を安心して選べるようになります。
結論:ロラタジンまたはフェキソフェナジンがオススメ

結論からお伝えすると、
- ロラタジン(服用回数1日1回)
- フェキソフェナジン(服用回数1日2回)
いずれかの成分を含む薬剤が、有効性・安全性・経済性の観点からオススメです。
抗アレルギー薬は大きく2種類あり

まず知っておいてほしいのは、市販されている「抗アレルギー薬」には、大きく分けて2つの種類があるということです。
1つ目は「抗ヒスタミン薬」、2つ目は「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」というものです。名前だけ見ると難しそうですが、これからその特徴をやさしく解説します。
※「アレルギーの仕組みと薬の役割」についてはこちらの記事もご参照ください。
抗ヒスタミン薬:今あるつらい症状に効く

「抗ヒスタミン薬」は、くしゃみや鼻水、かゆみなどのアレルギー症状を引き起こす「ヒスタミン」という物質の働きをブロックする薬です。症状が出たあとでも、飲めば比較的早く効果を実感できます。
このタイプの薬には、飲み薬(内服薬)と塗り薬・点鼻薬・点眼薬(外用薬)があります。
さらに飲み薬には、開発された時期によって「第1世代」と「第2世代」という分類があります。
- 第1世代:効果はありますが、眠気や口の渇きなどの副作用も出やすいのが特徴です。古くから使われているタイプで、風邪薬にもよく含まれています。
- 第2世代:新しいタイプで、眠気が出にくく、持続時間も長いのが特徴です。現在の市販薬では、この第2世代の成分が多く使われています。
症状をすぐに楽にしたいときには、この抗ヒスタミン薬が頼りになります。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬:症状が出るのを予防する

もう一つのタイプが「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」です。これは、アレルギー反応のきっかけになる物質(ヒスタミンなど)が体の中で放出されるのをあらかじめ防ぐ薬です。
このタイプの薬は、効果が出るまでに数日〜1週間程度かかるため、症状がひどくなる前から飲み始める「予防的な使い方」に向いています。
ただし、市販では飲み薬としては販売されておらず、点眼薬や点鼻薬といった外用薬に限られます。しかも、単独でこのタイプの成分だけが入っている商品はほとんどなく、他の薬と組み合わせて配合されていることが多いのも特徴です。
まずは第2世代抗ヒスタミン薬の使用がオススメ

- 副作用が少ないこと
- 効果を実感しやすいこと
- 単独成分であること
上記理由より、まずは第2世代抗ヒスタミン薬の中から薬を選ぶことをオススメします。
では、具体的にどの薬を選べばよいのでしょうか?有効性や安全性について一緒に見ていきましょう。
有効性:どの薬も効果に大きな差はなし

「一番よく効く薬はどれですか?」とよく聞かれますが、実は有効性(効き目)については、成分ごとの差はあまりないというのが現実です。
いくつかの研究論文では、主要な抗ヒスタミン薬(ロラタジン、フェキソフェナジン、エピナスチン、セチリジンなど)を人を対象に比較した試験が行われていますが、明確な優劣は示されていません。
というのも、各研究では「鼻詰まり」「くしゃみ」「目のかゆみ」など、評価している症状が異なっていることが多く、同じ条件で比較されていないため、一概に“どの薬が一番効く”とは言えないのです。参考までに、以下に公開されている研究論文の概要を3つ記載します(ほかにもたくさんあります)。
症状の種類や強さ、使うタイミングによっても感じ方は変わるため、自分に合った薬を見つけることが大切です。

参考文献1:ロラタジン vs フェキソフェナジン
試験概要:季節性アレルギー性鼻炎患者を対象としたクロスオーバー試験[1]
評価項目:医師による症状軽減度の評価
結果:初期治療成功割合、切り替え後の症状軽減度いずれにおいてもロラタジン群が優れていた
参考文献2:フェキソフェナジン vs ロラタジン
試験概要:季節性アレルギー性鼻炎患者を対象とした比較試験[2]
評価項目:鼻閉を含む個別症状スコア等のベースラインからの変化
結果:眼症状および鼻づまりの緩和およびQOLの改善度において、フェキソフェナジンはロラタジンよりも優れていた
参考文献3:セチリジン vs ロラタジン
試験概要:中等度から重度のアレルギー性鼻炎患者を対象とした比較試験[3]
評価項目:鼻腔通気度測定法による鼻炎症状の改善
結果:同等(セチリジンのほうが優れた傾向にあったが統計学的な有意差はなし)
安全性:眠くなりにくい薬を選ぶのがポイント

薬の効果だけでなく、「使っても日常生活に支障が出にくいか」という安全性もとても大切なポイントです。
抗ヒスタミン薬の中には、眠気を引き起こす成分が含まれているものがあります。車の運転中や高所作業中の眠気は重大事故につながるおそれがあり大変危険です。ここで注意してほしいのは、「眠気を感じていなければ問題ない」とは言い切れないということです。
実は、自分では眠くなったと感じていなくても、知らないうちに集中力や判断力が落ちていることがあるのです。
このような状態を、医学的には「インペアード・パフォーマンス(能力の低下)」と呼びます。
たとえ眠気がなくても、車の運転中や仕事中などにこの状態になると、大きな事故やミスにつながるおそれもあります。
そのため、抗アレルギー薬を選ぶときは、「眠気が少ない」とされる成分の薬を選ぶことが安全面でも重要です。
運転に関する注意がない薬

薬の説明書(添付文書)には、「服用後は車の運転を避けてください」と書かれていることがあります。運転注意の記載がない=眠気のリスクが低いと判断できます。
例としては、以下の成分が挙げられます:
- ロラタジン
- フェキソフェナジン
これらは、第2世代抗ヒスタミン薬の中でも特に眠気が少ないとされています。
パイロットも制限なく使える薬

航空業界では、飛行機のパイロットが服用できる薬について厳しい基準があります[4]。その基準をクリアしている成分は、ロラタジンやフェキソフェナジンなど、ごく一部です。
つまり、これらの薬は日常生活でも眠気の副作用を気にせずに安心して使える安全性があるということです。
妊婦・授乳中・高齢者は医師・薬剤師に事前相談を

原則として、市販薬を使う前に必ず医師や薬剤師に相談してください。一般的に安全性が高いとされているのは以下の通りです:
- 妊婦・授乳中の方:ロラタジン、フェキソフェナジン(自己判断での服用は避ける)
- 高齢者:眠気が少なく排尿障害のリスクも少ないロラタジンやフェキソフェナジンが選ばれやすい
経済性:価格を比較

最後に、気になる「お値段」についてです。市販薬は、同じ成分でもメーカーによって値段がかなり違います。
ここでは比較的眠くなりにくく、安全性の高いとされるロラタジンとフェキソフェナジンを含む薬剤のほか、いくつかの同分類薬剤を挙げてみます(2025年6月現在の希望小売価格帯、おおよその税込価格です):
成分 | 眠気 | 1日服用回数 | 価格/1日量 |
---|---|---|---|
ロラタジン | 無 | 1回 | 219円 |
フェキソフェナジン | 無 | 2回 | 206円 |
エピナスチン | 小 | 1回 | 253円 |
セチリジン | 中 | 1回 | 253円 |
ベポタスチン | 小 | 2回 | 282円 |
※価格は店舗や通販によって変動します
眠気の出にくさや生活への影響、安全性などを踏まえて、「無理なく続けられる」ものを選ぶのがポイントです。
まとめ:副作用の少ない、自分に合った薬を選ぼう

市販の抗アレルギー薬は種類が多く、最初は戸惑うかもしれません。でも、大事なのは「どれが一番効くか」ではなく、「自分の生活や体に合っているか」です。
- 今つらい症状があるなら抗ヒスタミン薬(第2世代)を
- 眠気を避けたいならロラタジンやフェキソフェナジンを
- 価格もチェックして無理なく使えるものを
薬に頼りすぎる必要はありませんが、正しく選べば強い味方になります。抗アレルギー薬を選ぶ際はぜひ参考にしてみてください。
参考文献:
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